それにもかかわらず、家族を中心としてナス農業は進歩しています。実際、農業は男女関係なく同じだけの利益を得ることができるので、より良い男女平等の仕事だと思います。2000年に高知県で農業に従事していた68,762人のうち、36,068人が男性、32,694人が女性でした。夫婦で一緒に(時には祖父母の手も借りて)働くことが珍しくありません。
先生は最後に、ナスに関わった知恵として農業における3つの「き」を教えてくれました。つまり、「きつい」「汚い」「危険」です。後の方は、たぶんトラクターや重い農具の利用に関係しているかもしれません。ハチにも関係があるでしょう。
帰る準備をしている間、西山先生と奥さんはひっくり返した木箱に座って、向き合ってナスを品質ごとに仕分けしていました。私は荷物を片づけながら周りを見渡しました。暗くなってゆく夜の空に浮かぶ温室のアウトライン、車道の至るところに留めてある白い作業用トラック、黙ってナスを仕分けする夫婦の姿が目に入ってきます。昔の坂本龍馬のような英雄の話ではありませんが、この暮らし方もまちがいなく高知の伝説として尊敬の念を持って残されることでしょう。